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NO35 北海道の原子力防災計画=半径10㎞でいいのか

2011年05月26日 09:26

福島第1原発事故でクローズアップされる原子力防災。北海道はどうなっているのか。現行の「北海道地域防災計画(原子力防災計画編)=1986年施行、以下単に『防災計画』」はその対策地域を「半径10㎞以内」と規定するなど、あまりに非現実的な想定で成り立っていることが浮かび上がっている。


泊原発事故を想定した「防災計画」は国の指針を基本として、泊原発第1号機の運転開始に伴い、1986年に定められている。そして、その対象地域は「10㎞以内」とされ、対象自治体は、泊、岩内、共和、神恵内の4町村に限られる。


しかし、今回、政府が福島原発事故で指示した避難区域は半径20㎞であり、30㎞圏外でも避難が必要な地域が指定されている。しかも、積算線量による「計画的避難区域」「緊急避難区域」という新たな概念も設定された。


このため、事故後、泊原発から半径30㎞圏内にある倶知安、仁木、余市、古平、積丹、赤井川、ニセコ、蘭越、寿都の9町村長が、防災の対象地域の拡大の必要性を確認し合い、それぞれの自治体の防災計画の見直しを進め、同時に道や北電に防災対策の強化を求めている。地域住民の命や安全を守ることを使命とする首長として至極当然の行動といえる。


このように、今回の福島原発事故を考えると現行の「防災指針」の甘さは明らかであろう。国の「防災指針」は79年の米スリーマイル島の事故を受けて80年に策定されたものあるが、その後、86年にチェルノブイリ事故が起きて30㎞圏内の住民が避難したのに、当時の自民党政府は「安全性が十分でない原発で起きた事故」として例外扱いしたとされる。


また、5年ほど前の2006年には、原子力安全委員会の専門部会が国際原子力機関(IAEA)が目安としている「半径5~30㎞」を検討したが「見直す必要がない」として拡大しなかったとされる(5月20日付、北海道新聞)


国は、現在この「半径10㎞圏」を見直す方針と伝えられる。仮に、30㎞圏まで拡大すると、泊原発事故を想定すると避難しなければならない住民は約2万5千人から一気に3倍強の8万7千人が対象となる。また、青森県に建設中の大間原発から海峡をはさんで函館市の一部も避難対象地域となる。

対象地域を拡大するということは、避難住民の拡がりだけでなく、防災計画に基づく避難訓練のあり方にも決定的な変更が求められる。果たして、これだけの住民が避難できる「避難場所」は果たして確保できるのか。事故の際の風向きによっては、避難所を含む小樽や札幌の一部までも含む訓練は必要ないのか。


そもそも、どうやって放射能汚染の情報をこれだけの住民に周知するのか、より早く遠くへ避難できる住民の誘導、特に高齢者、障がい者や福祉施設入居者の避難、その経路、輸送手段はどう担保されるのかなどあまりに多くの防災上の課題が検討の遡上にあがることとなる。


そもそも、電力事業者や国があまり大規模な泊原発の事故を想定した訓練に対しては当初から消極的だった。つまり「そのような事故は起こりえない」発想で固まっているからである。このため、防災訓練が「スケジュールをこなす訓練に終わっている」「マニュアル依存」(連合北海道)などの指摘が従来から根強くある。


道は、知事が福島原発事故後の道議会で「防災計画の抜本的な見直し」を表明し、現在、有識者委員会を設置し、10月を目途に課題抽出作業を開始した。国の見直しに先立って検討を開始する姿勢は評価したいが、依然として「国待ち」姿勢にとらわれている感がぬぐえず、委員は学識経験者ばかりで、避難しなければならない当事者である住民代表が入っていない。9町村を含む現場自治体の代表をいれるべきだったろう。


(政策情報室AI)