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NO18人勧「深掘り」論に合理性はあるか

2010年09月22日 15:50

片山総務大臣が、昨日の閣議後の記者会見で人事院勧告を上回って給与削減する、俗にiいう人勧の「深掘り」論に言及し、「深掘りするかどうか新しい内閣の下で早急に結論をだしたい」と述べた。


公務員労働組合の立場からすると当然納得できる話ではない。大臣も述べているとおり、人事院勧告は労働基本権制約の代償措置なので、これを尊重する義務が内閣や国会にあるからである。


そうした一般論だけではなく、人事院勧告は民間準拠の原則に則り、広く民間企業・事業所を対象に給与などを科学的に調査し、統計学の手法であるラスパイレス方式を用いて、公務員と民間の給与を比較して、その較差の是正を勧告しているからである。


もちろん、この調査のあり方にも政府側からは不満もあろうし、労組側も不備を指摘している経過にはある。しかし、今回の「深堀論」はこのような角度からの動機ではない。


片山大臣は、官僚出身だけあって、まず勧告制度の意義に触れた上で、あえて人勧の深掘りを主張する。その理由は、人事院勧告制度はそもそも国家財政が非常時の状態を想定しておらず、平時の状態の仕組みだいうのである。


確かに、国家財政は膨大な債務を抱えており、一人当たりの債務は財政再建中の夕張市の財政状態より悪い。明らかに非常事態である。しかし、果たして政府全体として、あるいは霞ヶ関全体がそのように自覚しているであろうか。


低成長下での「臨調行革」下で「財危危機」が宣伝された82年、勧告が凍結され、翌83年、84年、2年連続で俸給表が政府の手によってに改ざんされるという事態が発生している。この時はまず政府が「財政非常事態宣言」を発して、予算編成を含めあらゆる歳出削減・合理化が取り組まれた。


「財政非常事態」を宣言さえすれば勧告を「深堀り」しても良いと主張しているのではない。唐突な「消費増税」と「強い財政」などなんら具体性がなく、財政危機を克服するプランも見通しも不明のまま、単に人件費だけを削減しようとする軽薄さを心配しているのである。


国も自治体も財政危機の原因が人件費の膨張にあるのであれば、「深堀り」もそれなりの説得力をもつが、実際は、過去の景気対策に投じた巨額の借金の償還と歳入不足が主たる要因であり、勧告の「深堀り」程度ではこの財政危機を克服することは不可能である。


それでは、なぜ深堀りに固執するのか、つまるところ、それは「自ら血を流す」という、歳出削減「象徴」としての「深堀り」に過ぎない。財政が非常事態というのであれば、まず、政府が国民に向かって「宣言」を発し、予算編成をはじめ、徹底した予算の見直しと関連特別立法措置などを検討すべきだろう。


もともと民主党のマニフェストにあった「人件費の2割削減」は給与の削減ではなく、国の組織の見直しや国から自治体への権限委譲に伴うものであったはずだ。いつの間の給与に収斂してしまったのか。十分な説明もない。


また、国会議員の定数削減や歳費の削減はどうするのか。天下りの全面禁止はどうなったのか。安心・安全の社会保障制度の再構築は見えてきたのか。これらすべての制度設計も財政危機と無関係ではない。


繰り返せば、勧告の「深堀り」は、まず、基本権を回復したうえで議論すべきである。そのうえで、政府の財政再建の全体像を示し、十分公務員労働組合と協議・交渉すべき課題である、ということである。


自治体からすれば「国の財政の方が厳しいのに1円の給与カットも実施していない」という本音もある。しかし、それは国が「勧告尊重」という原則的な立場を堅持していることへの理解と同義語でもある。崩壊寸前の自治体給与制度であるが、国を基本に制度設計せざるを得ない自治体の事情は変わっていない。


国が軽薄に勧告の「深堀り」を続けるようなことになれば、自治体給与は一層混迷し、それこそ公務員給与制度は崩壊する。民主党菅内閣は、まず、公務員制度をどうしていくのか。労働基本権の回復をはじめとした道筋を明確にすべきである。

(政策情報室AI)