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2010年06月06日 09:19
何故つまずいたのか
昨夏の総選挙で、300議席を越える圧倒的な支持を得てスタートした鳩山政権に国民の多くは古い自民党政治からの脱却を期待していたに違いない。しかし、わずか8月半での辞任。「幻滅した」「失望した」というのが民主党を支持した有権者の大半の気持ちだろう。菅新内閣が8日にもスタートするが、民主党政権はなぜ、つまずいたのか。なぜ、発言どおりに約束を実行できなかったのか。その要因について、民主党はしっかり検証・総括をしなくてはならない。でなければ、菅政権もその同じ原因で短命で終わる心配がないわけではない。
外務・防衛官僚の抵抗
そこで考えたいのは「脱官僚・政治主導」という理念である。辞任の引き金となった沖縄の米軍普天間基地移設問題がなぜ、鳩山総理の発言どおりに進まなかったのか。もちろん、民主党の安保・外交政策の不十分性にあることはそのとおりであるが、意外とメディアが採り上げない問題として「外務官僚・防衛官僚の抵抗」を指摘している識者が多いことに気がつく。いくつか紹介してみよう。
日増しに強くなる抵抗
まず、鳩山総理の発言である。
鳩山総理大臣は退陣後の5日、菅新総理の母校東工大で講演し「8か月、総理大臣という職に挑戦してみたが、あまりにも変わらない分野が多く、また変わろうとすることに対する抵抗力が日増しに強くなるのを感じた」と述べたという。この「日増しに強くなる抵抗力」とは具体的に何であるのか明らかではないが、推測するに普天間基地問題でいえば「外務・防衛の官僚」の抵抗ではなっかたのか。
「総理はやる気だった」
このことを裏付ける証言がある。
元防衛大学校教授・元外務省情報局長の孫崎亨氏は、鳩山総理の私的勉強会の「安保・外交分科会」の部会長を務め、昨年の12月と今年の3月に2回ほど普天間基地の県外移設を直接提言したところ、鳩山総理は「よし、わかった。やってみる」と意欲を燃やしていたという。ところが、それから2月で結局辺野古案になってしまった。孫崎氏は、残念でたまらない、と嘆いていた。(カーラジオだったので正確ではないが、NHK日曜討論でも同様の発言をしている)
「辺野古は死活問題」
「見事に外務、防衛官僚と米国の筋書き通りの結論で終わった」とするのはイラク戦争に反対し、駐レバノン特命全権大使を解任された元外務官僚天木直人氏である。もっとも、彼の場合は、岡田大臣や北沢大臣が官僚のいいないりで、官僚を動かせなかった民主党政権や鳩山総理自身への批判に力点がある。
今年はあの60年安保から50周年。この戦後日本の外交と安全保障を規定してきた思考回路は日本の外務・防衛官僚のなかに深く根を張り、米国を含む広い利権構造を作り出してきた。しかも、自分たちが結論づけた辺野古案の変更は譲れない・死活問題であったことは容易に想像ができる。鳩山総理が「対等な日米関係」とか「常時駐留なき安保」と言葉ではいっても、彼らの懲り固まった頭からは「最低限県外移設」などという発想自体が浮かばなかったのだ。
官僚の官僚たる所以
「脱官僚」を掲げた民主党政権に対する官僚の抵抗は、6月中にも取りまとめられる「地域主権大綱」でも同じである。補助金の一括交付金問題では逢坂誠二総理補佐官が嘆いているように想像以上の抵抗にあっているようである。官僚は、特に国家公務員試験の1種合格者は確かに優秀であるけれど、官僚の官僚たる所以は彼らの持つ財源と権限であり、これを失った官僚は単に国家公務員にすぎない。戦後公務員制度を規定づけるキャリアシステムと天下り。この改革が何年かかっても進まないのも官僚の抵抗が強いからである。
問われるのは政治家の資質
しかし、官僚無用論には与することは適当ではない。むしろ、官僚の論理や理屈に迎合することなく、論争し、論破できる政治家の資質こそが問われているのだのいえる。脱官僚・政治主導とは反官僚論であってはならない。言うことを聞かない外務官僚・防衛官僚を更迭すればいいという話ではない。民主党が政調を復活するとういう。大いにここで、外交・安全保障について議論をして、中長期の日米関係を構想してもらいたい。そして、官僚の意見をききながら、さらに議論をすればいい。国会議員が国民の代表としてしっかり仕事をしてもらうために、高額な報酬を税金から支払っている。それに見合う資質を調査し研究し身につけてもらいたい。
自信をもって改革を
法大教授の五十嵐仁氏は「鳩山政権とは、頭は理想を掲げたが、肉体は昔のままだったような気がする」と言う。「頭で考えても体が思うように動かない。理想は立派だが内容が伴わない。だから、理想は実現しない。鳩山政権は、この繰り返しで失望を招いたのです」といっている。「菅総理は外交・防衛には疎い」という評判が早くも出回っている。辺野古案は沖縄が反対しているかぎり実現性は乏しい。いずれ、政治主導での解決が遠くないうちに迫ってくる。
鳩山総理が退陣後、民主党の支持率がV字型で回復した。もういちど、国民の期待を背負って自信をもって改革を進めてもらいたい。
(政策情報室・AI)